遠近両用メガネは、遠くから近くまで見える便利なレンズですが、
万能ではありません。
あくまで遠くが主体で近くはおまけ程度です。
「遠近両用を作ったけど、どうも見にくい、疲れる」
と言って来院する方がいますが、話しを聞くと
使用目的が遠近両用に向いていないことが判明します。
遠近両用メガネを作る理由として、
「パソコンが見にくくなってきたから」という人は多いでしょう。
仕事ではパソコンは必須でしょうから、仕方がありませんが、
遠近両用メガネでは解決しません。
理由は、遠近両用レンズの度数分布とパソコンを見る時の姿勢を
重ね合わせると簡単に分かります。
度数の分布図 |
画面は、おおよそピンク色のところで 見えます。 |
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パソコンを見る姿勢 |
ほぼ正面(水色の部分)で見ています。
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遠近両用レンズは、正面を見た時に、遠くのものにピントが合い
視線を下に落とすと30~40cm位にピントが合います。
つまり、デスクトップのモニター画面を見た時には、ほぼ正面を
見ているため、画面はかなり見にくくなります。
それを知らずにパソコン作業をしてしまうと、終わった後に
目が疲れる等の症状が出ます。
かといって、ピンク色の部分で見ようとすると、顎をかなり
上げなければならなくなります。↓
画面がよく見える 部分で見た場合の 姿勢 |
レンズの下(ピンク色の部分)で見ています。 |
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どうですか?
この姿勢(顎を上げた状態)で何時間も作業をすることは到底無理ですね。
しかも、ピンク色の部分で見ても画面全体が見えるわけではありません。
ノートパソコンの場合は、デスクトップパソコンに比べて
画面が斜め下にあるため、顎をあまり上げなくても良いので
デスクトップパソコンほど見にくくはありませんが、
視野の狭さは変わりません。
このようにパソコンをする方は、いわゆる老眼鏡や中近両用メガネが
向いています。
また、長時間の読書や何かに集中するときも、遠近両用メガネは不向きです。
理由は、近くを見る場合に視線を下に落として見ますが、
その時に見える範囲は、おおよそハガキ1枚分くらいです。
つまり、この視野の狭さが見にくさの原因になります。
例えば、雑誌など読む場合、遠近両用メガネでは、小刻みに顔を縦に
動かしながら見なくてはなりません。
しかし、熱中して本を読んでいくと必ず顔が固定されてきて、
且つ顔が下がってきます。
さらに、その顔が下がった状態で視線だけで文字を追ってしまいます。
この状態では、遠くが見える度数(上述の青色の部分)で見ることに
なってしまい、読み終わった後に目が疲れてしまいます。
また、横になって読む、ということも遠近両用では不可能です。
こうなってくると、趣味のはずの読書が億劫になり、
だんだんと本を手にとらなくなってきます。
編み物や手芸なども同様です。
こういう場合は、老眼鏡が向いています。
もともと、遠近両用メガネは遠く主体のレンズなので、
遠くを見るのが主体で、近くは時々見るのが適した使いです。
例えば、休日を過ごす場合、大体9割くらいは遠くを見て過ごします。
(スマホをたくさん見る人は例外です)
つまり、日常生活には非常に適しているレンズなのです。
特に外出時は便利です。外出時は、長時間近くを見ることは少なく、
逆にちょっと近くをみることは意外と多くありますので。
例えば、
また、職業柄、遠近両用レンズが適している場合もあります。
一番大切なことは、疲れにくくて、快適に見えること。
遠近両用レンズは、使用する場面によって向き不向きがあるので
しっかりと検査をして、自分に合ったメガネを作りましょう。
当院では、目的に合わせて、実際に見え方の体験ができます。
例えば、楽譜をみる場合でも、五線譜の間隔や音符の大きさも様々です。
当院では楽譜の見本も数種類用意して、実際にテストレンズで体験して、
レンズの種類(遠近両用レンズ、中近両用レンズなど)や度数を決定しています。
他にも、地図やナビ、タブレット、ゴルフクラブ、裁縫セット、文庫本
なども用意しています。
そして、いろいろな場面で使用する場合は、
その目的に合わせてメガネを使い分けることが
眼にとってもとても良いことなのです。